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渇望はどれくらい続く?アージサーフィンで欲求の波を乗り切る方法

禁酒や禁煙中の渇望の多くは、数分で消えていきます。欲求がどれくらい続くのか、なぜぶり返すのか、アージサーフィンで流されずに乗り切る方法を紹介します。

渇望(強い欲求)の多くは、何時間も続くものではなく、数分でおさまります。ひとつの衝動は、波のように高まり、ピークを迎え、やがて引いていきます。お酒やタバコなどをやめてから数週間のうちに、多くの人では欲求の起こる回数が減り、強さも弱まっていきます。ただし、それにかかる期間は人によって違います。

アイルランドの公的医療機関HSEによると、ニコチンへの渇望はたいてい3〜5分でおさまります。また、米国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)の治療マニュアルでは、飲みたい衝動はふつう数分、長くても数時間しか続かないとされています。

今まさに欲求が来ているなら、何かを決める前に、次のことを試してみてください。

  1. 待つ:「これから10分間はしない」と自分に言い聞かせて、タイマーをセットします。
  2. 気をそらす:4秒かけてゆっくり息を吸い、6秒かけて吐きます。コップ1杯の水を飲むか、立ち上がって歩きましょう。できれば別の部屋に移ってください。
  3. 決める:タイマーが鳴ったら、今の自分の状態を確かめます。その頃には衝動がやわらいでいることが多く、落ち着いた頭で選べます。

お酒やその他の薬物をやめるときの注意:大量に、または毎日お酒を飲んでいる場合、急にやめるのは危険なことがあるため、まず医師に相談してください。汗が出る、不安になる、眠れない、吐き気がするといった症状は、単なる渇望ではなく離脱症状のサインかもしれません。英国の国民保健サービス(NHS)によると、目に見えるほどの震え、意識の混乱、実際にはないものが見えたり聞こえたりする、けいれん発作といった症状があれば、すぐに救急医療が必要です。

ベンゾジアゼピン系の薬(一部の睡眠薬や抗不安薬など)も、やめるときは医師と計画を立てる必要があります。米国のNIDAは、急にやめるとけいれん発作が起きることがあると警告しています。また、しばらくオピオイドを使っていなかった人が再び使うと、過剰摂取(オーバードーズ)のリスクが高まるとWHO(世界保健機関)は述べています。

渇望はどれくらい続く? 欲求の波が高まり、ピークを迎え、引いていくまで

渇望には決まった形があります。衝動は、耐えられなくなるまで大きくなり続けるわけではありません。たいていは数分でピークに達し、そのあと静まっていきます。

段階 気づくかもしれないこと 役に立つこと
高まり ふと浮かぶ考え、緊張、胃がきゅっと締めつけられる感じ 名前をつける:「これは渇望だ」
ピーク いちばん強く引っぱられる感覚、「一杯だけ」「一本だけ」という考え、手に入れる方法を考え始める ゆっくり呼吸する。今は決めない。
引き潮 引っぱられる感じがゆるみ、ほかのことに意識が向く 波を乗り切れたことに気づく。

居酒屋やタバコを吸う友人のそばなど、強いトリガー(きっかけ)の近くにいると、また次の波が来るかもしれません。NIAAAの飲酒見直しガイド「Rethinking Drinking」が、できるときは誘惑の多い場から離れるよう勧めているのも、それが理由のひとつです。

渇望を終わらせるために、その欲求に従う必要はありません。何もしなくても、自然に消えていきます。

渇望とは何か:きっかけ、習慣、脳の報酬系

渇望とは、脳が「ごほうび」と結びつけて覚えたものに、強く引き寄せられる感覚です。何の前ぶれもなく起こるように感じるかもしれませんが、たいていはそうではありません。

米国国立薬物乱用研究所(NIDA)の説明によると、脳の報酬回路で働く化学伝達物質のドーパミンは、心地よかったことを私たちが繰り返すように促します。薬物は、日常のごほうびよりもはるかに大きなドーパミンの急増を引き起こすことがあります。そのため脳は、薬物をその周りにある場所や人、いつもの習慣と結びつけます。やがて、そうしたきっかけだけで渇望が起こるようになるのです。

飲酒見直しガイドによると、トリガーには外的なものと内的なものがあります。人、場所、時間帯といった外側のきっかけと、考えや感情、体の緊張といった内側のきっかけです。

喫煙研究のレビューでは、きっかけによって起こる渇望は強烈で、断続的に訪れ、再びタバコを吸い始める大きな原因になっていることがわかりました。その場でうまく対処できれば、一本吸うのを防げることも少なくありません。

禁煙・禁酒中の渇望:数週間で弱まる理由と、ぶり返す理由

ニコチンの場合、HSEによると、渇望がもっとも多いのはやめてから2〜3日後で、たいてい4〜6週間後には楽になってきます。NHSによると、ニコチンの離脱症状は平均3〜4週間続きますが、数か月感じる人もいます。お酒の場合、NIAAAのマニュアルでは、渇望はやめてすぐの時期にもっとも多いものの、数週間、数か月、ときには数年にわたって戻ってくることがあるとされています。

弱まる理由:きっかけが現れても手を出さずに過ごすたびに、脳は新しいことを学びます。「このきっかけがあっても、必ずお酒やタバコにつながるわけではない」ということです。心理学ではこれを「消去」と呼びます。飲酒見直しガイドでも、時間をかけて練習を重ねれば、飲みたい衝動は弱まっていくとされています。

ぶり返す理由:消去は、古い学習を消し去るわけではありません。心理学者マーク・ブートンの研究レビューによると、消去は古い学習の隣に新しい学習を加えるもので、どちらが勝つかは状況によって決まります。場所や気分が変わったり、時間がたったりすると、昔の渇望がよみがえることがあります。

一時的に強まる渇望さえあります。禁煙を続けると報酬が支払われる喫煙者を対象にした小規模な研究では、ふだんから感じる渇望は薄れていく一方で、きっかけによって起こる渇望は、一部の指標で7日目より35日目のほうが強くなっていました。

NIDAによれば、10年間薬物を使っていない人でも、昔暮らしていた地域に行くと渇望を感じることがあります。ですから、やめて数週間たってから強い渇望が来ても、後戻りしているわけではありません。その渇望も、やがて過ぎていきます。

もし渇望のあとにお酒やタバコに手が伸びてしまったら、一度のスリップを再発につなげない方法を読んでみてください。

アージサーフィンのやり方:90秒でできる手順

アージサーフィン(衝動の波乗り)は、研究者アラン・マーラットの再発予防の取り組みから生まれた方法です。衝動と戦うのではなく、過ぎ去るまでじっくり観察します。目的は渇望を消すことではなく、渇望を新しいかたちで体験することです。

いざというときに戸惑わないよう、今のうちに一度読んでおきましょう。

  1. 落ち着く(約15秒):座るか立つかして、足の裏を床にしっかりつけます。ゆっくり何度か呼吸しましょう。そして「今、渇望が来ている。これは過ぎていく」と自分に言い聞かせます。
  2. 見つける(約20秒):体の感覚を順に確かめます。衝動を感じるのはどこですか? 口、のど、胸、お腹、手でしょうか?
  3. 一か所に集中する(約30秒):いちばん強く感じる場所を選びます。熱い、締めつけられる、ピリピリする、そわそわする、どんな感じでしょうか? 「胸が締めつけられている。口が乾いている」のように、飾らない言葉で表してみましょう。
  4. 変化を見守る(約20秒):呼吸を続けます。その感覚が強まったり、場所を変えたり、やわらいだりするのに気づいてください。自分はサーファーで、衝動は足元の波です。
  5. 確かめる(約5秒):衝動の強さを0〜10で点数にします。まだ高ければ、もう一度繰り返すか、下で紹介する「4つのD」のどれかを使いましょう。

渇望へのマインドフルネス:研究でわかっていること

エビデンスは、まだ控えめです。

  • 喫煙する大学生123人を対象にした小規模な研究では、アージサーフィンの短い説明を受けても、その場の衝動は弱まりませんでした。しかし、そのグループは説明を受けなかったグループよりも、その後7日間に吸ったタバコの本数が少なくなりました。
  • 物質使用の治療を終えた286人を対象にしたランダム化比較試験では、マインドフルネスに基づく再発予防を受けた人は、標準的な再発予防や通常のアフターケアを受けたグループと比べて、12か月の時点で薬物を使った日数が少なく、大量飲酒も少なかったと報告しました。
  • 9件の試験をまとめた2017年のレビューでは、この方法による渇望の軽減はわずかで、ほかの治療法と比べて再発への明確な差は見られませんでした。エビデンスの質は低いと評価されています。

つまり、アージサーフィンで衝動がわいてくるのをいつも防げるわけではありません。それでも、衝動に従わずにいるのを助けてくれる、リスクの低いスキルです。

4つのD:その場で渇望に対処する方法

渇望そのものが起こらないようにする裏技はありません。でも、そのあと何をするかは変えられます。HSEは禁煙する人に「4つのD」を教えています。冒頭で紹介した手順を、もう少し詳しくしたものです。どんな衝動にも試してみてください。

  • Delay(先延ばし):渇望が過ぎるまで、行動を先に延ばします。10分のタイマーをかければ、一回の渇望の多くはそのあいだに過ぎていきます。
  • Distract(気をそらす):手と注意を、ほかの何かに向けましょう。友人に電話する、外に出る、階段を使う、などです。
  • Deep breathing(深呼吸):吐く息を吸う息より少し長くして、ゆっくり呼吸します。HSEは20回の深呼吸を勧めています。
  • Drink water(水を飲む):冷たい水をコップ1杯飲めば、口と手にやることができます。

少なくとも喫煙については、体を動かすことも助けになります。短時間の運動についてのメタ分析では、その場のタバコへの渇望を減らすという強いエビデンスが見つかりました。渇望が来たときのシンプルな運動プランも参考にしてください。

頭の中で数えるのが面倒なら、Guardian Angelのホーム画面にある浮き輪アイコンから欲求SOSを開けます。呼吸のペースを案内するガイドのほか、10分間のタイマーが使えるやり過ごすと、クイックチェック:HALTがあります。

渇望の正体がHALTのとき

渇望が、実は基本的な欲求が姿を変えたものであることがあります。HALTは、Hungry(空腹)、Angry(怒り)、Lonely(孤独)、Tired(疲れ)の頭文字です。イライラや疲れ、ストレスは飲酒のよくあるきっかけですし、たっぷり食事をしたあとに飲みたくなる人はあまりいません。

さっと確認してみましょう。最後に食べたのは、眠ったのは、誰かと話したのはいつですか? 何かに腹を立てていませんか? 当てはまるものがあれば、まずその欲求を満たしましょう。30秒でできるHALTチェックで、それぞれの対処法を紹介しています。

習慣別の渇望:お酒、ニコチン、大麻、ギャンブル、スクロール

飲酒への渇望

よくあるきっかけは、人が飲んでいるのを見ること、仕事から帰宅したとき、週末、そして強い感情です。うれしい気持ちも例外ではありません。自分にとって危険な曜日や時間帯を見つけ、前もって対策を立てておくと役に立ちます。

渇望が強いまま続くなら、渇望を減らす薬について医師に相談してみてください。NHSも、治療の選択肢のひとつとして挙げています。

ニコチンへの渇望

朝の一杯目のコーヒーや仕事の休憩など、きっかけによって起こる渇望は、急に強く襲ってくる傾向があります。こうした渇望についての研究では、ガムやトローチなど即効性のあるニコチン置換療法が役立つ可能性が示されています。

NHSによると、いちばん効果的なのは、マウススプレーのような即効性のあるタイプと、ゆっくり効くパッチを組み合わせる方法です。どれを選ぶかは、医師や薬剤師、禁煙外来などに相談するとよいでしょう。

大麻への渇望

夜の時間帯や特定の友人と過ごすときなど、以前吸っていた時間や場所に備えて、別のことで埋める計画を立てましょう。睡眠や気分、離脱症状への対処については、大麻をやめる方法を参考にしてください。

ギャンブルの衝動

定期的にギャンブルをする97人を4週間リアルタイムで追った研究では、渇望がその後のギャンブルを予測していました。衝動が来たら、お金から距離を置く合図だと考えましょう。先延ばしにする、アプリを閉じる、誰かに話す。ブロック用のソフトや、本人の申告で利用を制限する仕組み(自己排除プログラム)は、つらい日に、もうひとつの歯止めになってくれます。

スクロールしたい衝動

スクロールは薬物ではありません。それでもNIDAによると、脳の報酬の信号によって、快い行動は無意識のうちに繰り返しやすくなります。退屈や通知で引き寄せられたら、スマホを10分間別の部屋に置いて、衝動が薄れていくのを見守りましょう。じっくりリセットしたいなら、7日間のSNSデトックスを試してみてください。

よくある質問

渇望は完全になくなりますか?

必ずしもそうとは限りませんが、たいていはかなり弱まります。多くの人は、時間とともに渇望の回数が減り、強さも弱まっていきます。昔のきっかけに触れたときやストレスがあるときに、まだ現れることもあります。でもその頃には、渇望をやり過ごす練習を重ねています。

夜になると渇望が強くなるのはなぜですか?

夜は、疲れ、仕事の終わり、ひとりの時間、昔からの習慣など、きっかけが重なりがちです。NIAAAのガイドでも、時間帯、仕事からの帰宅、疲労がきっかけとして挙げられています。しっかり食事をとる、いちばんつらい時間帯の過ごし方を決めておく、いつもより早く寝る。どれも助けになります。

何か月たっても渇望があるのは普通ですか?

はい。NIAAAのマニュアルによると、渇望は数か月、ときには数年にわたって続くことがあります。何か月もたってから渇望が来ても、それまでの歩みが消えるわけではありません。たいていは昔のきっかけが現れたというだけで、同じ方法がまた役に立ちます。

断酒後、飲酒欲求はどれくらい続きますか?

飲みたい衝動はやめてすぐの時期にもっとも多く起こりますが、NIAAAの治療マニュアルによると、数週間、数か月、ときには数年にわたって続くことがあります。一回ごとの衝動はたいてい数分で過ぎ、対処の仕方を身につけるにつれて弱まっていきます。大量に、または毎日飲んでいる場合は、やめる前に医師に相談してください。NHSによると、離脱症状は最後に飲んでから6〜12時間で始まることがあり、危険な場合もあります。目に見えるほどの震え、意識の混乱、実際にはないものが見える、けいれん発作といった症状があれば、救急医療が必要です。


自分にとってつらい日を見つけるには、Guardian Angelで毎日を良い日難しい日として記録してみてください。数週間記録を続けると、傾向でいちばん難しい曜日がわかるかもしれません。ダウンロードは無料で、記録はスマホの中だけに保存されます。

今すぐ相談できる窓口

  • 緊急のとき:身の危険があるときや急に体調が悪くなったときは、119に電話して救急車を呼んでください。お酒や薬物をやめたあとに、混乱、幻覚、けいれんが出たときも同じです。
  • 死にたい気持ちがあるときや、つらくて限界なとき:#いのちSOS 0120-061-338、よりそいホットライン 0120-279-338。どちらも無料・24時間対応です。
  • お酒や薬物のこと:地域の精神保健福祉センターや保健所で相談できます。窓口は依存症対策全国センターで探せます。
  • たばこのこと:かかりつけ医や禁煙外来へ。条件を満たせば、健康保険で禁煙治療を受けられます。
  • ギャンブルのこと:地域の精神保健福祉センターのほか、ギャンブル依存症予防回復支援センター 0120-683-705(無料・24時間)でも相談できます。
  • 日本国外にいるときFind a Helplineで、国ごとの無料・秘密厳守の相談窓口を探せます。